ストーリーとしての競争戦略①【楠木建】

 本日は楠木建さんの「ストーリーとしての競争戦略」を取り上げたい。なかなかの骨太本なので、まだ読破できておらず、少しずつまずは第1章~第3章までの気づきを書きたい。

 この本を読むきっかけになったのは、通っていたビジネススクールで、参考本として推薦されることが多く、いつか読んでみたいと思ったからだ。また著者の本の絶対悲観主義を読んで面白かったことと、YouTubeなどで著者の人柄に触れたことも要因だ。骨太本という印象は前からあったので、時間に余裕の出来た時期に購入してみた。

 まず第1章~第3章で特に印象に残ったキーワードは、なんといっても「SP」と「OC」という戦略の概念である。私の復習も兼ねて、この2つの違いについて綴りたい。

 SPとは、「Strategic Positioning」の略で、ポジショニングの戦略論を言う。企業の競争戦略は色々あるが、まずそもそも自社がどういうポジショニング、どこで戦うのかということを考える戦略だ。本書では松井証券の例が紹介されている。松井証券は幅広く證券業務を行うのではなく、従来の証券会社の営業をやめて、インターネットの株式取引の仲介に特化。ターゲット顧客も法人ではなく、頻繁に株の売買を繰り返す知識豊富な個人投資家に絞ったことで急成長した事例が書かれている。いわゆる「戦略とはやめること」と言われる概念は、このSPに該当するだろう。

 OCとは、「Organizational Capability」の略で、組織能力の戦略論を言う。SPで戦う場所が決まったら、そこで競争相手がいる。その競争相手に対して、どんな競争優位性(模倣困難性)を持つかを考える戦略だ。本書では分かりやすい例としてトヨタが紹介されている。トヨタは有名なカンバン方式(必要なものを、必要なときに、必要なだけ作ることを目的とした生産管理方式)や「なぜ」を5回繰り返す問題解決法などが知られているが、このような自社の物事のやり方(本書ではこれをルーティンと表現している)や自社の能力をOCと表現している。そしてこれらは情報がオープンになっているにも関わらず簡単に真似できないと書かれている。

 SPとOCの分かりやすいメタファー(比喩)として、本書では野球選手のイチローや松井秀喜選手を挙げているが、私はあえてサッカーの本田圭佑選手を例にあげてみたい。

 本田圭佑選手の成功をもたらし戦略を、SPとOCの概念から考えていきたい。

 まずSPとして、本田選手自身がよく言っているが、マイナースポーツではなくメジャースポーツである「サッカー」を幼少期に選択したこと。業界の選択ならぬ、スポーツの選択はまさにSPの構成要素である。またオランダで活躍後、5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)に行くのではなく、あえてロシアリーグに行った。5大リーグの場合、試合に出られないリスクもある。ロシアでしっかり試合に出て、CLで活躍するというプランはSP的戦略だろう。

 OCとして、本田選手の他のサッカー選手との違い、競争優位性としては、スキル面では「キック力」が挙げられるだろう。FKで得点を決める力、無回転でのロングシュート等は他選手には真似できない強みだ。またピッチ外での違いとして、専属の栄養士を若い時からつけて、食事管理するあたりも本田選手の強さを支えている要因である。その他、「世界一のサッカー選手になる」と公言できる野望やメンタル力も本田選手のOC的要素であろう。

 以上のように、戦略には2つの切り口があることを学んだ。このことを今後仕事で戦略を立てる時に生かしたいし、人生においても考えていきたい。

 

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